「食の感動」を届けるトリドールグループの挑戦 #3
- 株式会社 トリドールホールディングス
- 代表取締役社⻑ 兼 CEO
粟⽥ 貴也 様
トリドールグループが考える未来とは
4年半で急成長した企業価値
- ISENSE 岡田 :
ところで粟田さんに株式の相談をいただいたときに資料を作りましたよね。あのときに僕は、この会社のポテンシャルの高さを考えたら、時価総額がこの位置なのはおかしいというレポートを作った。当時の時価総額が1162億円で、9位ぐらいだったと思うのですが、今、何位になったんでしたっけ?
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
上場企業の中では4位、時価総額は3800億円ほどになりました。
- ISENSE 岡田 :
私たちが関わる以前に、株式分割をされたら、株価が半分になってしまって、株価対策を考えてくれないかと言う話もありましたよね。
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
本当に色々ありましたね。
- ISENSE 岡田 :
ただ丸亀製麺の事業などを調べると、やはり他社は真似できないビジネスモデルだと思ったんです。
そこでポーター賞を狙いませんか?という話をしました。これは製品、プロセス、経営手腕において、独自性のある戦略を実行し、業界において高い収益性を達成、維持している企業に贈られるものですが、結果、見事に獲得されましたね。
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
これはあちこちで言わせてもらってます。「こう見えても、ポーター賞やで」って(笑)
- ISENSE 岡田 :
ポーター賞の審査で重要なのは、参入障壁です。他の会社がなぜ真似できないかと言うことを証明しなくてはいけない。それを一緒に考えながら、IRの発信の仕方なども意見をさせていただいて。
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
岡田さんに会った時から比べると、今では株価は4倍になっています。
- ISENSE 岡田 :
買っておけばよかった(笑)
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
コロナ禍でも力強く上がったので、本当に良かったと思っています。
テイクアウトでいかに価値を伝えるか
- ISENSE 岡田 :
コロナ禍といえば、粟田さんはコロナ前は、テイクアウトは絶対にやらないとおっしゃっていたんですよ。
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
そうそう! 手づくり・できたてが丸亀製麺の良さなんだから、店内で食べなきゃダメだろうと思っていました。ただコロナ禍では、まず感染リスクを恐れてお客さんが店内に入ってこなかった。もう背に腹は変えられないと、やるしかないですよ。
- ISENSE 岡田 :
それまでやらないと言いつつ、うどんがおいしく食べられる容器の開発はずっとされていたことに驚きました。だからこそ、お客さまの行動変容にスムーズに対応できましたよね。
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
というのも、安いだけのテイクアウトにしたくなかったんです。普通だったら、詰め置いた弁当を並べて、はい、どうぞって売ると思うんですよね。
でも我々はオーダーを聞いて、うどんを詰めて、天ぷらをのせて、できたて感を持って帰っていただくことに手間暇をかけたんです。詰め合わせを間違えて怒られることもありましたけど(笑)、その場で詰めるのがやっぱり我々のポリシーなんです。それが伝わったのか、うどん弁当は驚異的に売れましたね。
- ISENSE 岡田 :
テイクアウトも根付いて、ここ1年ぐらいで業績もすごく伸びて。2023年は「IT Japan Award」で準グランプリ、一般社団法人日本IR協議会主催の「IR優良企業奨励賞」も受賞されました。
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
こんなに非効率な会社がIT賞をもらえるんですから、ちゃんと中身を見ていただけるんだと、ちょっと安心しましたね。
同業他社がこの分野において追いかけてこないところが、我々にとっては非常にブルーオーシャンな戦略だと思っていて。今後はそれをさらに拡充させることが大切だと思っています。
例えば、僕が商売を始めて38年経ちますが、全てのコストが一気に高騰したのは初めてです。最低賃金も上がっていますが、それでも人材を確保するのが難しくなってきている。
さらに追い風のように省人化やフードテックが伸びてきて、外食産業においても、今後は一気に省人化・省力化の道に進んでいくでしょう。
ただ、その中で我々は人手をかけて商売をすると言っている。きっと今後は極限に非効率なことをやっている会社になるわけですが、これを突き通せたら、まさにブルーオーシャンだと思っているわけです。
今後はCSからESの時代に
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
そしてこれまではお客様満足、つまりCSを最優先してきましたが、これからは従業員満足度、ESを最優先でやらないといけない。CSを上回るESでないと、CSが実現できないと考えています。
CS、CSと言い続けてきた我々が、手の平を返したようにESと言い出すと、気持ち悪がられるんじゃないかと思いますけど(笑)
- ISENSE 岡田 :
アメリカの先進的な企業でお話を伺うと、やはりCSの前にESだと言っている会社は非常に多いんですね。と言うのも従業員がお客様を満足させるわけで、疲弊している社員では作業になってしまって、絶対にお客様を満足させられないという話なんです。
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
先ほど最低賃金が上がった話をしましたが、世界的に見たらまだまだ安いんですよ。
- ISENSE 岡田 :
全然安いですよね。
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
だから結局消費にお金が回らず、デフレのスパイラルから抜け出せない。そうなるとますます人手不足が顕在化してきて、崖っぷちに追いやられているのが、今の我々の現状なんです。
- ISENSE 岡田 :
ただ、もちろん給料を上げないといけないと言う課題がある一方で、御社で働いている人たちはすごく楽しそうなんですね。
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
ありがとうございます。僕は人が夢中になれること、笑顔になれるものって、おいしいものを食べているときだと思うんです。
僕はよく「外食は身近なレジャーだ」と言うんですけど、今晩一緒にご飯食べることが楽しみで、今日1日頑張れたりするじゃないですか。そういうのを僕はとても良いなと思っていて。
- ISENSE 岡田 :
御社が掲げる「食の感動で、この星を満たせ。」という理念もすごく素敵ですよね。
- トリドールホールディングス 粟⽥⽒ :
やっぱり働く人が楽しければ人が集まるし、結果お客さんも楽しいということがあるんですよ。
だから、ここからは急ブレーキをかけながら、逆ハンドルを切るようなことをしていかないといけないと思っています。
- ISENSE 岡田 :
弊社の社員もプロジェクト推進のお手伝いをさせていただいていますが、今は素晴らしいCIOの方もいらっしゃって、安心しています。
我々が一番大切にしていることは、お客さまのビジネスの成功です。その道のりで足りないピースがあったり、困ったことが出てきたら、臨機応変に最適と考える形でお手伝いをする。我々の究極のゴールは、ビジネスの課題がなくなり、お客様の元を去ることなんです。我々がいなくなるということは、お客様のビジネスが大成功しているということですから。トリドールさんが世界的な企業になって「食の感動でこの星を満たす」その時を、共に共有できたら嬉しいですね。